傘の恨み

職場で傘を盗まれた。
工場派遣という民度の低い職場だから手癖の悪い奴がいるのは仕方のない事だと思うが、そいつには良心というものがないんだろうか。
「人のものを盗ってはいけません」と小学校で教わらなかったんだろうか。何故新品で使い勝手の良い俺のビニール傘を盗っていくんだ。近くにあったボロい方のビニール傘にしとけよ!っていうか盗るなよ!!!
どうやら傘泥棒というのは、傘立ての中からきれいな物を選んで取っていくそうだ。どうせ一回使ったらパチンコ屋なりコンビニなりに置いていくくせに。いや、そんな事はどうでもいい。「傘を盗られた」という事実自体が腹立つのだ。
悔しいので、職場の入り口付近で待ち伏せし、俺の傘と同じ形状の傘を持った奴全員を憎悪の視線で睨み付けた。全員俺の存在など無い物であるかのように、表情も変えずに通り過ぎた。こっちはこの大雨の中ずぶ濡れになって突っ立っているというのに、言葉を掛ける事すらしない。
人の冷たさが心に滲みた。

とりあえず俺の傘を盗んだ奴は、ひどい死に方をして地獄に堕ちればいいと思う。

何故同じ形状の傘を持っている奴から取り返さなかったかって・・・話した事すらない人間も多いし、多分悪気があって盗ったんだろうし、下手な事をして逆恨みされて殺されたらという可能性も否定できないからである。外人も多いし。