RE:Kinderクリア

RE:Kinderクリアしました。

作者様の訃報を知った事が切欠でというのが非常に残念なわけですが……
リメイク版が出ていた事はもっと前に知っていたので、早めにプレイしておけばよかったと後悔。
作者のぱるんさんとの交流はほとんどありませんでしたが、新作が公開されるたびにプレイし、頻繁にブログを読みに行っては楽しませてもらいました。
もう新作もできないしブログも更新されないと思うと、とても残念です。
月並みな言葉ではありますが、ご冥福をお祈りいたします。

で、感想……ネタバレやその他過激な要素があるので隠します。


「平成ピストルショウ」のようなミュージカル要素やファンタジックな描写が盛り込まれており、それがホラーやトラウマシナリオと不思議と上手くマッチしている。ラテン音楽や演歌調のBGMも、最初聞いたときは面食らったが、これがまた効果的な使い方をされている。
ラスボスであり裏主人公ともいえるゆういちクンの描写がとても素晴らしい。子供の持つ純粋さや残酷さやひっちゃかめっちゃかさをあの演出で見事に表現している。その分他の子達が小学生にしては人間できすぎているように見えてしまった節があるが。
自分を「お姫様」と例え、辛さから救い出してくれる他者を「王子様」と例えるメルヘンチックさがなんともかわいらしい
終盤、彼がもう一人の自分と対話する様は身につまされた。作者いわく「ゆういちクンが生き残るラストは想像できない」らしいのでハッピーエンドは無理だが、旧作に比べると、ラストで少しだけ救われたような感じなのが良かった。願わくば「ゆういちクンとすいはんき」のように、あの世で楽しくやっていて欲しいと思う。

旧作に比べると、音楽や演出がずいぶんと明るくコミカルになっているものの、内容や心理描写はむしろ前よりもシビアで容赦なくなっている。終始心が痛かった。「日米ハートフル公園」や「毒電波発射搭」には笑わせてもらったが。
なんというか、自分自身を激しく追い詰めている感じなのだ。作者様も、作ってて相当精神消耗したんじゃないかと思う。
ラスボス戦前にひろとに言われた言葉が激しく胸に突き刺さった。「平成ピストルショウ」でも主人公の心の声が代弁していたが、人に勝手に理想を抱いて依存すると、いずれ重くなって離れられる。おそらく作者自身も、依存する側される側と両方を何度も経験してきただろうと思う。自分もあるのでそれは理解できるような気がする。

同じ悩みを抱える者同士で傷つけ合う事もある。同じ気持ちを持っているのだから理解されて当たり前と思い込んでいると、ほんの少しの意見の相違が許せなくなる。よくある事だし自分も経験があるが、やはり他者は他者と割り切れる強さが必要だと思った。現在自分は他人と深く関わる事を避けているが、多分これは正しい方法ではない。しかし、それ以外の適切な方法が取れるほど器用な人間でもない。
鬱の苦しみを理解せずに甘えと切り捨てる人達の気持ちもわからないではない。人間は自分が頑張っていると思い込んでいればいるほど、他人の甘えを許さないものである。ただ、鬱は決して甘えではない。客観的に見ていてもわかるように、鬱による無気力や性格の変化は、本人の努力ではどうすることもできないのだ。Kinderの世界では「心の病気」という概念がない故、うつ病患者を責めなじる人々の態度が容赦ないが、現実にもまだまだそういう連中は存在する。かくいう自分も、鬱病の身内から目を背けて他人任せにして逃げた卑怯者なので、全く偉そうな事は言えない。忙しいと理由を付け、現実逃避する事によって自分を守っていた。情けない。
無理解な連中と思われてる人達も、そうやって目を背ける事で自分を守っているのかも知れない。自分が理解できない物からは、なるべく遠ざかりたいと思うのが普通だろうし。
「どうする事が一番正しい」なんて答えはないのかも知れない。全員が強くあれればそれが一番いいのかも知れないが、現実はそうもいかないから難しい。

トゥルーエンド以外のエンディングについて。仲間を一人でも死なせた場合、途中までは旧作と同じなのだが、最後のオチが違う。その後、他のエンディングを見る為のチュートリアル的なイベントが始まる。(何も考えずにプレイした場合、まず最初にこのエンディングを見る事になるので)
仲間を全員死なせた場合、これがかなり衝撃的。なんじゃこりゃー!と思ったが、しんどい思いをして見た価値はある。しゅんすけの今後に幸あれ。